荷物を再配達し過ぎてない?荷物再配達が巻き起こす大きな環境負荷について
ネットで商品を購入し、家に商品が届く。自分が作った物、まとめた書類などを相手に届ける。物が届いたり、物を届けたりできるのは、配送業者さんがしっかりと仕事をしてくれているからです。
しかし、今、配送業者さんの環境に大きな負荷が掛かっています。その原因が荷物の「再配達」です。一度行ったところに、もう一回行く。これって、かなりのエネルギーですよね。
1年で1.8億時間、約9万人分の労働力が再配達に費やされている
24時間×365日でも8760時間ですよ。1.8億時間とは凄まじい労働時間であることが分かります。再配達に費やす時間がごっそり無くなれば、配送業者の利益率も相当高まります。
再配達によって、1年間で約42万トンのCO2(二酸化炭素)が排出
42万トンのCO2と言われてもピンと来ないかもしれません。42万トンのCO2は、JR山手線の内側の面積約2.5倍のスギ林が吸収する量だそうです。
山手線の内側の面積は、63~65㎢(6,300~6,500ha)。東京ドーム(4.6755ha)の約1,300個分相当です。つまり、東京ドームが約3,250個あれば、再配達分のCO2が吸収できることになります。
再配達率は平均19.6%
人気番組の視聴率を言っているわけではありません。この再配達率は、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社が実施した調査による数字です。5人に届けたら、1人は再配達。
5人へ届ける業務を1セットとした場合、25人に届けたら、1セット追加の仕事が生まれるという計算になります。
しかも、これは全体の平均。地区によって、季節によって、再配達率が急増してしまえば、ドライバーさんの仕事は一気にパンクします。
深刻なドライバー不足、さらには10万人以上も減少!?
運送業界では、物流の要ともなるトラックドライバーの深刻な人手不足が続いており、40歳以上の割合が、小型・中型車で約6割、大型車で約7割。
ネット通販の荷物が爆発的に増え、大手業者でもさばききれない状態で、過酷な労働環境に苛まれている現状です。
さらに、東日本大震災の復興と20年の東京五輪に向けての人材需要のうえに高齢化もあって、人材争奪戦がし烈になり、現場で働いてるドライバーさんたちが少ない人数で必死に仕事をやり繰りしています。
再配達になってしまうのは「配達が来るのを知らなかった」から
国土交通省の「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会報告書」によると、1回目の配達で受け取れなかった理由は「配達が来るのを知らなかった」が約42%とダントツ。
現状、ほとんどの配達は、運送業者が「ぶつけ本番で届け先にアタック訪問する」形になっています。
ネットや携帯電話が普及していない一昔前は、他人の家に玄関コンコンと叩いて、アポなしで訪問するというのは、ごく当たり前でした。
でも、今の時代って、皆スマホでメールや電話をして、約束をしますよね。今の時代の人は「いきなり来る」ということに不慣れなのです。今の新卒社員は会社の外線がなかなか怖くて取れないといったように、「いきなり他人からアタックが来る」という文化は、時代に即していないと言えます。
配達に来るタイミングを知ることができ、高齢者もきちんと使いこなせるようなアプリケーションが登場すれば、それだけでも再配達率はぐっと下がるかもしれません。アプリケーション内で、受け取りが不可能になったら、配達業者へ即座に通知が行き、そのアプリと連帯した配送ルートの出力が行えれば、常にベストな配送を行うことができます。
ドライバーさんが頭でこなしていた作業をアプリケーションによりオートマチックにスピ―デイーに行わせることで、ドライバーさんは頭がスッキリした状態で、業務に望むことができます。
再配達は企業や店舗のブランドイメージを悪くする
商品を購入するという観点で言えば、「再配達」になってしまうと、商品をまだ手にしていないというフラストレーションが溜まっていくことになります。
しかも、先に料金を払っている場合、払った時点でお買い物をしているので、そもそも「届くのが遅い」という感覚になってしまいがちです。
運送業者さんも、業務に追われながら、焦った状態で届け先の人に対応してしまうと、「あの運送業者は対応が悪かった」というようなイメージになり兼ねません。
その積み重ねがネガティブなブランドイメージへと繋がっていくのです。
再配達を防ぐ、「1回目のお届け」のシステム向上が求められる
再配達の問題を解決するために、「コンビニ受け取り」などの対策が進められていますが、これは負担の矛先がコンビニに変わるだけです。
・受取手法のシンプル化
・オートメーション化
・受取セキュリティ強化
・受取方法の多様化
・受け取り場所の多様化
・日時指定の確実性向上
など、あらゆる観点で、運送業者、コンビニ、郵便局、地方自治体、セキュリティ会社、不動産管理会社、IT企業などが一斉に取り組んで、解決する必要があります。
さらには、私たちのプライベートな生活、労働環境を変えるなどの視点も再配達の改善には重要になってきます。
ドライバーさんの汗、必死に物を届ける姿
今の社会って物を届けるってすごくお手頃な価格で実現できていますよね。ネット社会を成り立たせているのは、現場を駆け回る人たちの活躍があってこそ。
一生懸命荷物を届けるドライバーさんにも、ちょっと余裕を無くして雑になりながら頑張るドライバーさんにも、感謝を忘れないことが大切です。
日本は「お客様は神様」という思考があり、「お金を払っている側の天下」という思考がありますが、そもそも、報酬に見合えっているかどうかという考えを持つことが大切です。
再配達問題はこれからの日本の社会にとって、切り離せない問題なのです。
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