江戸の「あんどん」と「ろうそく」に見るエコシステム
自然全体を考えるリサイクルと、個人消費におけるリサイクル、この2つを上手く噛み合えば、全体は増えもせず、減りもせず、汚染や廃棄物も発生ないと言えます。(一時的には発生したとしても、常に変化し、一時的な汚染や廃棄物はリサイクルされ、必要なものとなります)
そんな完璧とも言えるリサイクルが施されていたのが江戸時代のリサイクルなのです。
そこで、今回は、江戸の多くの優れたエコの体系から、「あんどん」と「ろうそく」をご紹介します。
エコな油づくりで成り立った照明環境
江戸時代は、日本の国内でできる油やろうだけを行灯(あんどん)やろうそくの形で燃やしていました。
行灯(あんどん)とは、円形または四角の木や竹のわくに紙をはり、中に油皿を置いて火をともした照明器具です。
照明用の油は、綿の実や菜種から取れる油を利用していました。
しかし、綿の実から取れる油は食用にもなる上等な植物油だったので、人々は工夫を凝らし、使えそうな油は何でも使いました。
鯨の獲れる土地では、鯨を油にし、いわしが豊富に獲れる土地では、いわしを油に大量に使っていました。
また、江戸では、生活必需品を売り歩く行商人が居て、油も必要な分だけ、少量でも購入することができました。
畑から集めてきた菜種は、晴れた日に一日干して、水分を蒸発させてから、火にかけて炒ります。
火が十分通ったら、次は臼に入れてつき砕きます。火起こしはもちろん、油を使いません。水車が発達していた地域では、水力を利用した臼で、菜種を粉にしていたそうです。
粉になった菜種は、蒸籠入れて、蒸し上げられ、油を分離しやすい状態にします。
圧搾機にかけて油を搾ります。
都会では街灯が必要な場合があって、その場合は、少しの雨には耐えられるような屋根のついた大型の辻行灯を使っていました。
そして、圧搾機に掛けて油を絞ります。当時の日本の圧搾機は高い圧力を出すために、楔(くさび)を使った油しめぎという独自の装置を使いました。
菜種の粉が圧縮され、流れ出した油は、臼の下の桶に溜まります。
その油をに立ててから、紙でろ過すれば、製品となります。
一度絞ったカスも、再び砕いて蒸して、二度目の絞りに掛けて、使い切るを徹底します。
菜種の油粕は、結城ちっしの肥料として活用ができ、土の一部となり、完全なリサイクルが成り立ちます。
高級品として利用されたろうそく
広い部屋で複数の照明が必要な場合や外出の際の携帯用の提灯の光源には、ろうそくが使われました。
江戸時代では、木ろう(ハゼノキなどの実からとったろう)使ったろうそくの製造が盛んになります。
ろうそくを作るには、まず、生ろう(ろうそくの原料)を作る必要があります。
まず、ハゼを収穫して乾燥した実をたたいて皮を取り、ふるいに分けて、実だけを別にします。
次に、実を臼でつき砕いて、もう一度、ふるいにかけると、果肉と硬いタネの部分に分かれます。
ろうを大量に含む果肉を蒸籠で蒸して、ろう分を分離してから、俵に入れて、地獄搾りという楔(くさび)を応用した独自の圧搾装置にかけてろうを絞りだします。
絞ったままの労を生ろうと言いますが、この状態でも、劣悪なろうそくとして使えないことはありません。
より上質にろうそくにするためには、不純物を除き、晒して見た目を白くする工程が必要です。
一か月間、毎日日光で漂白すると、ろうは次第に白くなります。
ろうそくは消耗品としては飛び切り高く、とても庶民が気軽に買えるものではなく、料亭での宴会、遊郭、儀式、広間での集会、旅行、提灯用など、限られた場合のみでした。
ろうを含めた植物の油は、植物と水と二酸化炭素が主な原料で、太陽のエネルギーによって合成した物質です。植物が太陽の光を浴びるだけで、自然に良質な油を使い、それだけで生活を成り立たせています。
菜種やハゼは1年で実り、イワシは2年で成魚になるなど、油で使われる動植物と人々の消費は、持続的で良い循環でした。
油を燃やしてできる二酸化炭素は、大気に交じって、植物に取り込まれ、光合成に使われます。
最後に
江戸の「あんどん」と「ろうそく」の原料の使い方、作り方、完成後の利用方法など、ありとあらゆるものを惜しみなく使おうと姿勢が分かりますよね。使ってもなお、さらに使える可能性があるんじゃないか。江戸の方たちのエコは、もったいない精神から学ぶ部分は多いかと思います。ぜひ、今回の記事も参考にしてみて下さい。
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