温暖化でワインの味が変わる?地球温暖化とワインの関係

温暖化でワインの味が変わる?地球温暖化とワインの関係

ワインは、非常に繊細な生産物です。ワインは人の手で造られる飲み物というよりは、天の恵みを人が最大限に生かした、自然を反映した恵みだと言えます。

ワインの品質は、ブドウが醸造所に届いた時点で大方決まっている

こんな言葉も言われるほどです。言ってみれば、ワインとは、気候(気温)中心主義でブドウを育てる、そのブドウの生育に細やかなあらゆるノウハウを培ってきたからこそ、優雅で品高く価値のある飲み物で在り続けているわけです。

温暖化はブドウの生育に根本的に、そして、衝撃的なインパクトをもたらしています。

米通信社ブルームバーグによるワインの記事では、現在(2015年現在)のワインの原材料となるブドウの生産に適している地域のうち、最悪の温暖化シナリオでは25%から73%の地域が2050年までに生産不能になるという研究報告が記されています。

気候ベースによるワイン造りが伝統化しているから、気候のベースが変わると大問題になる

例えば、ピノ・ノワールやシャルドネから造られるヴィンテージ・ワインは涼しく、非常に湿った気候のあと急激に熱く日照りが続くことで美味しい味を引き出すと言われます。

しかし、温暖化によって、ピノ・ノワールやシャドルネの栽培が「ずっと気温が高い状態」になってしまうと、ワインは不味くなってしまいます。

酸のキレの良い白ワイン用ブドウは、生育期間が短く涼しいドイツが適していて、力強い赤ワイン用ブドウは、長くて暑くて乾燥したスペインが適しています。

ドイツの気温が暖かくなれば、酸のキレが悪くなってしまいますし、スペインがさらに厚くなれば、ブドウが熟し過ぎて酸味がない赤ワインになってしまいます。

今までの気候が変動することで、今まで適していたブドウ品種や栽培手法が不適切なワインを不味くする手法になってしまうのです。

地球温暖化とワインの糖度・酸味・香り・タンニン

ブドウの化学成分の蓄積は気温に左右されます。ブドウの成分がどのように蓄積されるかは、ワインの味へ直接つながっていきます。

高温はブドウの糖分を増やすので、発酵によるアルコール度数が上がることになります。アルコール度数が高くなると、苦味が強まったり、風味を邪魔したり、ワイン全体の輪郭が変わってしまうことがあります。

ワインを味わうには香りが不可欠です。ワインと香りは一心同体なのです。しかし、気温上昇すれば、香りを生み出す微量成分にも影響を及び、今までその土地や銘柄の特徴かつ特長となっていたアロマを醸し出すことができなくなるかもしれません。

また、過剰な暖かさや日照はタンニンを減らし、バランスの欠けたワインに繋がるとされています。適量なタンニンのバランスは、ワインが食べ物を引き立てる役割を果たします。タンニンは、口の中を洗浄し、味覚受容体から脂肪を除いてくれるからです。

そして、これらの問題を対処するにしても、微妙な誤差が大きな壁となります。収穫時期の適期は大気が温暖になるにつれ、酸と糖分が望ましい比率になる時期が風味の最適時期よりも顕著に早まるのです。そうなると、酸と糖分と風味のベスト時期を見つけるのが困難になると言われています。

ブドウ農家が農園単位で工夫をしていくしかない

温暖化がワインに与える影響を考える際には、3つの範囲の気候を考える必要があると言われています。

大気候:ブルゴーニュやボルドーといった地方の気候
中気候:ブドウ園という単位の気候
微気候:ブドウの房が感じる気候

もちろん、大気候は変えることが難しいですよね。ブドウ園で、ブドウ農家が気温上昇に対抗する策としては、

・葉による覆いを増やす
・ブドウの木の列の向きを変えて日陰を増やす
・スプリンクラー(畑や庭などの散水装置)の利用
・遮光ネットの利用

暑さを避けてブドウ園や北や高地に移すのは多額の費用が掛かるうえ、温度や土壌条件が異なるため、同じ風味のワインにはならないと言われています。

さらに、新品種開発の場合、ワインの育種には10年以上も掛かると言われ、まったく新しい試みをするにも、かなりのエネルギーを要することが問題となっています。

今までワインが造れなかった場所でのワイン造りが良い方向にも

日本の事例を挙げましょう。地球温暖化による気温上昇によって、北海道では、高級ワイン用品種の栽培適地になっています。

赤ワイン用品種ピノ・ノワールは30年前、成熟に必要な温度が足りなかったが、最近10年間はほぼ毎年、十分な積算温度(日平均気温10度以上)を確保しています。必要な果実中の酸を残しながら、高級ワインになる糖度20以上に達しているようです。

ワインは急激な変化の対応が求められる

これからワイン造りはますます難しくなっていくかもしれません。そして、過去の良質なワインはさらに価値を帯び、これから登場するワインはまったく新しいワインとなり、過去と大きな分断を経ていくことになるかもしれません。

<参考資料>
・「高級ワイン 産地 拡大 温暖化じわり 原料ブドウ適地北上|日本農業新聞」
・「地球温暖化の影響、豪ワイン業界が「炭鉱のカナリア」に|REUTERS」
・「温暖化の影響で美味しいワインが飲めなくなるかも?|ギズモード・ジャパン」
・「温暖化が脅かすワインの味 別冊日経サイエンス 人類危機 未来への扉を求めて」日経サイエンス社 2016
・「ワインを脅かす地球温暖化 | リコー経済社会研究所」




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