日本のごみ処理システムの実情  ~サーマルリサイクル・CCUSについて(前編)~

日本のごみ処理システムの実情                        ~サーマルリサイクル・CCUSについて(前編)~

皆さんはごみを捨てるとき、そのごみがどのように処理されるかを考えたことはありますか?今回は世界から見た日本のごみ処理とサーマルリサイクルについてご紹介します。

ゴミを処理する方法は、大きく分けてマテリアルリサイクル(資源に戻して再び製品化すること)・焼却・埋め立ての3つです。次のグラフは、OECD(経済協力開発機構)が発表した世界各国のごみ処理方法の内訳です。

Municipal waste | READ online (oecd-ilibrary.org)

焼却率にあたる部分は濃い黄色と薄い赤色で示されており、前者が熱回収を伴う焼却、後者が熱回収を伴わない焼却です。熱回収とは、廃棄物を燃やした時に出るエネルギーを回収・利用することを意味しており、日本ではこれを「サーマルリサイクル」と呼んでいます。日本のごみ焼却率は77%で世界1位・・・!一方で、諸外国と比べたリサイクル・コンポスト率は以下のようになっています。

世界のごみ焼却ランキング 3位はデンマーク、2位はノルウェー、日本は?(井出留美) – 個人 – Yahoo!ニュース

「ルールに沿って分別もしているし、日本のリサイクル率は8割以上あるんじゃないの・・・?」と思った方もいらっしゃるかと思います。日本ではサーマルリサイクルが主流となっていますが、実は外国からは「サーマルリサイクルはリサイクルに入らない」という指摘もあるのです。上のグラフではこのリサイクル法を計算に入れずにデータが出されているためこのような低いリサイクル率になります。

サーマルリサイクル?サーマルリカバリー?

では、なぜサーマルリサイクルが指摘を受けているのか、またサーマルリサイクルが持つ長所と短所はなにかについてご紹介します。

 サーマルリサイクルが正当なリサイクル方法として認められない理由は、廃棄物を燃料として燃やしてしまうため再資源化できないからです。リサイクルとは循環させることであって「燃焼」は資源循環にそぐわないという考えを

根本的なリサイクルにはつながらないこと以外に、どんな短所がサーマルリサイクルにはあるのでしょうか?それは有害物質である「ダイオキシン」の発生です。もちろん最近は技術が発展し、高温で廃棄物を焼却することで発生抑制が可能になっていますが、完全に排出をゼロにすることは難しいです。発がん性がある物質なので注意が必要ですよね。

 では反対に、サーマルリサイクルにはどんな長所があげられるのかご紹介します。

  • 完全に分別しきれない廃棄物を有効活用できる
    食品の容器包装などには、食品の汚れが付いていたり複数の素材が使われていたりして分別が難しい場合があります。マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに向かない廃棄物も有効に活用できるのがサーマルリサイクルです。
  • 石炭や石油と同等のエネルギー量を得られる
    枯渇資源を消費することなく熱エネルギーを得ることができるのは大きなメリットと言えます。CO2の排出も抑えることが出来ます。

ケミカルリサイクルに比べると設備投資額が少ない
環境に優しいリサイクルプラントを建設する計画を立てても、初期投資に莫大なコストがかかって運営が難しくなれば意味がありません。少しでも安く効率的な廃棄物処理を行おうとするとサーマルリサイクルが選ばれてきたのかもしれません。

参考URL:【5分でわかる】サーマルリサイクルとは?その概要と世界の実情を解説 | THE OWNER (the-owner.jp)

なぜ、リサイクル率が日本は低いのか?

 改めて最初の棒グラフを見てみると、ドイツやスウェーデンなどではマテリアルリサイクル(クリーム色)の割合が高くなっていることがわかります。なぜここまでリサイクルの在り方に違いがあるのかをEcoracyなりに調べたところ、プラスチック容器包装の廃棄物処理にかかる法律と関係があるのではないかと考えました。

 日本には「容器包装リサイクル法」という法律があります。対象となるのは「法令で定められた特定の容器包装が一般廃棄物になったもの」です。会社や商業施設などからでたごみは産業廃棄物となるので対象外です。そのうえ、回収ルートや処理の担い手もパターンがいくつかあります。

EUにはこれに近い法律として「容器包装廃棄物指令」があります。こちらの対象は「市場に投入されたすべての容器包装」であり、回収や処理の責任は「汚染者負担の原則にもとづく」ということだけが決められています。連合なので各国の事情に違いはあると思いますが、何よりEUの方が処理やリサイクルの対象が広くわかりやすいといえます。あくまで推測になりますが、このような法律の違いがリサイクル率の差に影響しているのではないでしょうか。

参考URL:book2019_appendix.pdf (cjc.or.jp)

産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター「EUの資源消費、資源効率、廃棄物、リサイクル、SDG12」(リサイクルデータブック2019)

次は、サーマルリサイクル時に発生するCO2のリサイクルに関して取り上げます!




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