魚の「乱獲・乱売・乱食」問題。日本人は魚を食べ過ぎているの?
乱獲・乱売・乱食とは?
獲れない、売れない、安いが起こす3つの乱れ
乱獲
漁師が魚を獲り過ぎること
乱売
流通業者による薄利多売し過ぎること
乱食
消費者がコスパを求め過ぎること
乱獲、乱売、乱食が起きている理由は、漁師、流通業者、消費者、それぞれが独立した事情を抱えていますが、私たちが乱食したり、流通業者が乱売するから、漁師は乱獲しなければいけないという循環を生んでいるのも事実です。
魚は小ぶりになり、数も減り、漁師の生活は苦しくなる
漁師は「獲りたいだけ獲りたい」と思いながらも、実際に海に出れば、漁獲規制をしなければならないと、肌で感じていると言えます。Wedge漁業問題取材班らが著した「魚を獲り尽くす日本人」によれば、
壱岐の勝本漁協によると、2004年度は、150キロ以上のマグロが99本揚がっていたが、13年度は13本、14年度は6月時点で1本という悲惨な状況である。150キロ未満のものも激減している。
とされています。2014年6月、IUCN(国際自然保護連合)が14年のレッドリストを公表。ニホンウナギが絶滅危惧種に指定されました。ウナギの漁獲量は、1960年代に250トンに迫る勢いでピークを示していましたが、1980年に入ると、50トンを切り、2013年には5トン、2016年は14トンと推移しています。レッドリストは国際自然保護連合(IUCN)が作成した絶滅のおそれのある野生生物のリストです。
世界銀行が発表したした「FISH TO 2030」という世界各国の漁業未来予測レポートによれば、北米やインドや中国や東南アジアの主要国・地域の生産量で、2030年にかけてマイナス成長になるのは日本だけで、他国は軒並み成長すると予測されています。
1つの魚を乱獲し、それにより獲れる量が激減すると、次の魚がターゲットになり、その魚も激減。戦前は、東シナ海のマダイが乱獲され、1930年以降、急激にマダイが獲れなくなると同時に、ニベの乱獲が始まります。そして、ニベは1945年には、ほとんど獲れなくなってしまうのです。
乱獲:日本の漁業は乱獲を強いられる仕組みになっている?
日本の漁業は獲ったもの勝ちの取り放題競争。大型巻き網漁が一気に魚の母数をかっさらい、一本釣りの取り分が少なくなってしまのは、目に見えていますよね。漁獲量の配分化によって、乱獲しなくても、多くの漁師が安心して経営を安定させる仕組みが大切です。
乱食:日本は魚を食べ過ぎているの?
農水省「食料需給表」「食料需要に関する基礎統計」、農林統計協会「改訂日本農業基礎統計」によると、魚介類の1人1日当たりの純食糧供給量(消費に至るまでの量)は、1950年までは、50g以下でしたが、1955年からの美はじめ、1990年に入ると、100gを突破し、2000年に入ると、緩やかに下がって2014年には約75gになっています。
ただし、総人口を見なければいけません。1950年は、約8300万人、1955年は約8900万、1990年約1億2400万人、1995年は、1億2500万、2000年約1億2700万、2015年も約1億2700万ですので、魚の消費は1995年~2005年の間がピークと言えます。
乱売:流通業者による「過剰な薄利多売」が魚を減らす
「薄利多売」という概念は、数をこなすことでシステムを成り立たせる仕組みで、漁業や流通業に限らず、扱うものに資源性があればあるほど、枯渇しやすく、疲弊しやすくなります。
最後に:高級志向になる必要はないけれど、ある程度の対価を払っても成り立つ仕組みを作る必要がある
漁業の乱獲・乱売・乱食を分析していくと、日本の根本に潜む「労働」や「消費」の国民性が垣間見えますよね。「アニメを成り立たせるためには、アニメーターを低賃金で作らせるしかない」という現状がアニメの危機を招いていることにも似ていると言えます。そもそもが、アニメの乱作、作る量を抑えることが大切と論じられているも、乱獲・乱売・乱食に似ています。
過労死という言葉が世界共通語になるくらい、やはり、日本は乱れるくらいに量をこなすことで成り立たせようとする部分があるのかもしれません。
消費者目線で言えば、CMで高級寿司店のCMなんてありませんよね。安いことが凄くいいことだという価値観があります。また、「お客様=神様」という思考を消費者が持っていて、消費者はもてなされるべきという感覚が強いのも日本の特徴かもしれません。
おもてなしの心があるのは良いことですが、おもてなしされる側が敬意を対価として支払うということも大切です。乱獲・乱売・乱食の問題は、漁業に留まらず、あらゆる分野で日本のこれからに警鐘を鳴らす出来事だと言えます。
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