発電は屋根だけじゃない!窓の発電、窓の創エネって?
太陽光発電と言えば、「屋根」に取り付けるイメージがありますよね。しかしながら、発電技術はどんどん進化していて、今、注目されているのが「窓」の発電です。
今回は、そんな窓の発電、窓の創エネについて、掘り下げていきたいと思います。
50階建てのビルなら、屋上に設置する太陽光パネルの50倍の発電量に
アメリカの企業SolarWindow Technologiesは、太陽光発電できるパネルになる建物用窓ガラスを開発しており、そのガラスの見た目は、従来の商業ビルなどの遮光ガラスとほぼ同じという優れものです。
有機ポリマーで作られた柔軟性のあるシートによって、太陽光や人工の光から発電ができる仕組みになっています。
実際に50階建てのビルで実験を行った結果、得られたエネルギー量は従来の屋上に設置するタイプのソーラーパネルの50倍に及んだようです。
創エネ窓ガラスが作り出す副次効果
SolarWindow Technologiesの創エネ窓ガラスは、紫外線もカット可能で、削減できる二酸化炭素排出量がこれまでの12倍になるとのこと。生産はガラス工場に設備を加えるだけなので、巨額の投資を必要とせず、新しい技術によって新しい環境負荷を生むという問題もありません。
後述するAGC旭硝子のサンジュールSUDAREは、空調費用を年間23.5%抑えることも分かっています。
ガラスの創エネの技術によって、ガラスによる新たな環境改善の可能性が次々と見出されています。
複層ガラスにし、窓の省エネ性能を高める
日本の企業でガラスの創エネをリードしているのが、旭硝子。代表的なガラスは、「アトッチ」と「サンジュール」の2つがあります。
省エネガラスの「アトレッチ」
アトレッチは、窓の省エネ対策のために開発され、1枚ガラスの窓に後からガラスを貼りつけて複層ガラスにし、窓の省エネ性能を高められるようにしたものです。
なんと言っても「今の窓ガラスに後付け」と「室内から貼る」という設置のしやすさが魅力です。「足場を設置していざ工事!」のような大掛かりな施工が必要なくなるため、導入したい企業や自治体にとっては、「コストカット」と「工事による休業を短期間にできる」というメリットがあります。
結露などを抑える効果に加え、フィルムに比べメンテナンスコストが低いという利点もあります。
創エネガラス「サンジュールSUDARE」
「サンジュールSUDARE」、先ほど紹介した後付けガラス「アトッチ」をガラスの両面に取り入れた一体型太陽電池です。単結晶の太陽電池セルを使用しているので、発電効率を維持したままシースルーを実現できるというメリットがあります。
太陽光発電メーカーが作る窓ガラスセルの弱点をカバー
窓の基本機能は室内に光線(おもに日光)を導き入れて明るくする「採光」ですよね。窓と太陽という観点で発電を考えると、太陽光発電メーカーは、窓にシースルータイプの太陽光電池を貼り付ける方式を提案します。
しかし、シースルータイプのものは、どうしても、外の景観が見えづらくなるという弱点があります。窓から外の景色を見るという需要のない施設であれば問題ありませんが、商業施設や観光施設であれば、やはり、内から外への見やすさは保ちたいですよね。
そこで、旭硝子が行った対策は、太陽光電池セルに細かな切れ目を連続で入れてスダレ状にするということ。
スダレとはこのような感じです。
上記の写真の右側がスダレですね。スダレの隙間から光が注いでくるのが分かると思います。
サンジュールSUDAREは、約3mm幅のセルとセルの間に2.5mm幅のスリットを入れて
います。スダレなので、和風建築にもマッチします。
キリン横浜ビアビレッジは試飲室75平方メートルに導入され、貼るだけで窓の年間1400kWh発電が可能になりました。
オーダーメイド製品だからこそ注ぎ込める技術がある
創エネで屋根などのパネル式太陽光発電メーカーは、開発スピードが速く大手の自社開発に対抗するよりも、いいものを世界から調達した方がいいという考えがあります。そのため、建物にフィットさせるために、自社生産した独自のパネルを作るということはありません。
しかし、サンジュールシリーズは、注文生産式であるため、カーテンウォールやビルの歩行者専用通路に使ったり、多くの場所に導入したりすることができ、色なども建物のデザインに合わせることができます。
例えば、クライアントから「緑の雰囲気に合った素材」という依頼を受けると、グリーンを刷り込んだ多結晶シリコンで作られたサンジュールGreenを納品。注文生産によるガラス作りがそのまま技術の進化に繋がっています。
垂直に立つガラスへの発電性と透過性を高めることで、より窓の省エネと創エネが可能に
発電効率を高めるためには、南の向きに、約40度まで傾けるのがベスト。逆に言えば、東や西の向きに垂直な場合は、発電効率が悪くなる。
光が透過しなければ、セルを貼ったガラスからの景観も見づらくなります。垂直ガラスに対しての技術が高まれば、これから窓の創エネはどんどん進んでいくでしょう。
窓に貼ることに対する技術が高まれば、窓だけではなく、建物のあらゆる場所が創エネの場所になり、私たちが使うものはすべて創エネにするものへと変わっていくことになるでしょう。
エネルギー消費と同時に創エネが起こるというのは、消費と生産のバランスが良いとも言えます。これから、窓の創エネがますます楽しみですね。
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