知っておきたい「宇宙船地球号」7の知識
1、宇宙船地球号の発祥は、経済学者ケネス・E・ボールディングの講演
環境問題に警鐘を鳴らし、地球を宇宙船に喩えた「宇宙船地球号」。アメリカの経済学者であるケネス・E・ホールディングスは、1966年に「未来のための資源協会」という講演を行いました。
その中で、ボールディングは経済を2つのタイプで説明します。
「カウボーイ経済」と「宇宙飛行士経済」です。カウボーイ経済は、アメリカ西部開拓時代(ここからカウボーイの由来)のように資源の枯渇をまったく心配する必要のない経済です。
一方、宇宙飛行士経済は、宇宙船の中の経済。宇宙船の中には、あらかじめ、生きるために必要なものや水や空気や食材があり、宇宙船の外からは何も取り出せません。使い続ければいつかなくなり、排出物で宇宙船内部は汚染されていきます。
宇宙船の中で、持続可能なシステムを開発し、健全な生態系を確立しないと、宇宙船内で人間は生き残れなくなります。
2、宇宙船地球号にもファーストクラスとエコノミークラスがある!?
ボールディングは宇宙船地球号に関して、
この宇宙船に多くの欠陥が指摘されるようになった。酸素配給装置に入り込む様々な有毒ガス、エネルギーの限界、食糧不足、飲料水の汚染、ファーストクラスとエコノミーの格差、船室感のいざこざ、店員の問題など、様々な問題が噴出している
と、述べています。格差問題を宇宙船の中のファーストクラスとエコノミークラスに喩えて表現したのです。
3、現代のレオナルド・ダ・ビンチと呼ばれたバックミンスター・フラーの「宇宙船地球号操縦マニュアル」
数学者、哲学者、エンジニア、建築家など多彩に活躍したアメリカのバックミンスター・フラーは、1969年に「宇宙船地球号マニュアル」という著書を出しています。
地球という惑星を1つの宇宙船とみなして、人類が地球をうまく操縦していく方法を説いた著作です。
地球を「1つの精密機械」と捉えたのは、思想的分野と実践的分野の双方で活躍したバックミンスター・フラーならではと言えます。
地球を1つの精密機械と捉える。これは、部品としてシビアな生態系が集まり、地球という精密な機械が成り立っているという考えに立つものです。
4、宇宙船地球号を背景に生まれた「国連人間環境会議」
ボールディングが宇宙船地球号を唱えたのが1966年、フラーが「宇宙船地球号操縦マニュアル」を出版したのが1969年。
こうした地球全体を捉えた環境意識の高まりを背景に、1972年には、スウェーデンのストックホルムで、国連人間環境会議が開催されることになりました。
5、宇宙船地球号を悩む船員圧迫の問題
宇宙船地球号を捉えた時に、宇宙船のシステムをエコで持続可能な循環型にすれば良いという思考が生まれるかと思います。
しかし、宇宙船地球号を最も悩ませるのは、船員の急速な増加。
つまり、人口爆発です。
参考:「人口爆発のホント。発展途上国の人口爆発の原因と先進国がやるべきこと」
6、宇宙船地球号は一気に環境が壊れていく
宇宙船地球号の船内の環境は破壊され始め、ゆっくり徐々に破壊へ向かうだけでなく、破壊される時は指数関数的な急激な悪化により、短期間で破壊されると考えられています。
7、社会学者の加藤秀俊による「宇宙船地球号のゆくえ」
社会学者である加藤秀俊は「宇宙船地球号のゆくえ」の中で、宇宙船地球号の抱える問題を以下の4つにまとめています。
1、地球規模の環境問題は解決し得るのか
2、地球的思考と個人的感情のバランスは取れるのか
2、科学技術を持ち出しても新しく生まれる負荷に対処できるか
4、船員自体の格差によって摩擦が起こらないか
問題をすっきりと一掃できないところに、宇宙船地球号をこれから守っていくことの複雑さがあります。
最後に
今回は「宇宙船地球号」という言葉を分かりやすく解説してきました。
宇宙船地球号だけでなくても、私たちは絶えず様々なコミュニテイ(生態系)を行き来していますよね。
ある意味、宇宙船地球号の中にも、小さな船がたくさんあって、それを乗りこなしながら、大きな船の中で過ごしているわけです。
地球全体主義になるためには、やはり、日頃から、自分の心に余裕を作り、相手のことを見つめられるようになるという人間力を使っていく必要があります。
科学などからのアプローチも必要ですが、私たち個人の心が地球を救う行動体質になれるマインドが、今は一番求められているのかもしれません。
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