新時代のプラスチックリサイクル、「油化」とは?

食品のパッケージや容器類、ペットボトルに始まり、日用品、携帯電話、家具、家電など、あらゆる品物に使用されているのがプラスチック。もはや私たちの生活は、プラスチック抜きには考えられないようになっています。

しかし、プラスチックが登場したのはわずか100年ほど前のこと。第二次世界大戦以降、急速に利用が広まった歴史の短い材料のため、紙・ガラス・金属などのようにリサイクルの体制が整わないまま大量生産・大量消費されるようになってしまい、現状では大部分が焼却処分されてしまっているのが現状です。

プラスチックのリサイクル方法にはどんなものがある?

プラスチックをリサイクルする方法として、現状では3つの方法があります。

1.サーマルリサイクル

プラスチックを燃やすときに発生する熱を回収し、発電を行ったり、温水の熱源として利用したりするのがするのがサーマルリサイクル。例えば、ごみ焼却施設に隣接した公共のスポーツ施設で、ごみ焼却の際の熱を温水や冷暖房に利用するのがこれにあたります。
2019年の統計では、日本のプラスチックのリサイクル率は85%。うち60%はこのサーマルリサイクルが占めていますが、欧米では熱回収はリサイクルには含められていません。サーマルリサイクルを除くと、日本のプラスチックリサイクル率は20%超あまりと、世界的な低水準にとどまっています。

2.マテリアルリサイクル

使用済みのプラスチックを加熱して溶かし、再生原料に加工するのが「マテリアルリサイクル」。日本で使用されるプラスチック全体の22%がマテリアルリサイクルされているといわれています。
しかし、マテリアルリサイクルには問題点があり、異なる種類のプラスチックが混ざってしまうと、でき上った再生原料はもろく低品質なものになってしまいます。そのため、マテリアルリサイクルの際には分別が不可欠です。

しかし、近年では、食品や医薬をはじめとした領域で、パッケージに防湿性、耐衝撃性、遮光性、酸素遮断性、保香性などを持たせるため、ポリエチレンやポリプロピレンといった素材のフィルムに、PET、ナイロン、EVOHなどの高い機能を持った樹脂のフィルムを張り合わせた「複層フィルム」を使用するのが主流になっています。
複層フィルムの登場により食品や薬品の保存技術は飛躍的に向上した半面、張り合わせられて分別不可能な複層フィルムは、プラスチックのマテリアルリサイクルを行う際の大きな障害となっています。

3.ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルは、プラスチックを化学反応により分子レベルに分解し、様々な化学物質に再生する方法のことです。
技術的には古くからあるリサイクル方法ですが、リサイクル対象となるプラスチックが限られていることから、これまでは実用化されることは多くありませんでした。現時点では日本国内で、ケミカルリサイクルによって処理される割合は、廃プラスチック全体の3%程度にとどまっています。

プラスチックの「油化」と、その問題点

長年、EREMA機を使用したプラスチックのマテリアルリサイクルを推進してきた湘南貿易ですが、今湘南貿易が改めて注目しているのがケミカルリサイクルの中の「油化」技術です。

プラスチックはもともと石油を原料としてできています。「油化」は、廃プラスチックを熱分解して低分子化し気体へと変化させ、冷却して炭化水素油にする技術をいいます。
しかし、これまでの「油化」技術では、安定的に処理できるプラスチックはPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)の3種類のみ。さまざまな樹脂フィルムを張り合わせた複層フィルムの場合は、油化によるリサイクルは困難とされています。

その理由は、複層フィルムに使われる一部の樹脂は、熱分解時にリサイクル用の機械に悪影響を与える物質を発生させてしまうから。

例えば、お菓子などの袋には、酸素による食品の劣化を防ぐため、酸素遮断性の高いPET(ポリエチレンテレフタラート)を張り合わせたフィルムが使用されます。
しかし、PETは熱分解の際に安息香酸やテレフタル酸などの有機酸を発生します。これが安息香酸による処理装置の腐食や、テレフタル酸による処理装置の閉塞が原因の運転上の障害を発生させるため、処理が困難とされています。
また、PVC(ポリ塩化ビニル)やPVDC(ポリ塩化ビニリデン)のような塩基を含むプラスチックを含む場合も同様に、熱分解の際に塩化水素を発生し処理装置の腐食の原因になるため、同様に油化によるリサイクルができません。

湘南貿易の取り組む油化システム構築

実は、湘南貿易はEREMAを使用したケミカルリサイクル装置を15年ほど前に導入し、現在も稼働していますが、対象原料は3Pのみで、上記のような課題を解決できていませんでした。

そこで、湘南貿易では令和3年度より、リサイクル時に添加剤等を加えて有害な酸の発生を抑えることで、これまで「油化」が困難とされていた、また、マテリアルリサイクルにも不向きだった複層フィルム廃材の再資源化を可能にする技術開発のための取り組みを開始しました。

現在、ラボスケールでのテストを行いながら、小型実証機の設置を準備しています。
この研究により、

1)第一ステップ: PET/PA/ALを含んだ複層フィルムのケミカルリサイクル技術を確立し、

プラスチック製品製造等に再利用できる化学原料として回収する


2)第二ステップ: PVC等難処理プラスチックの安全な処理方法の確立


等を行う予定です。

また、プラントには、環境にやさしいプラスチックリサイクルマシン・EREMAを使用。
EREMA機独自特許であるカッターコンパクターにより、原料となるフィルム廃材の破砕・減容・溶融・添加剤の混錬のプロセスを一度に行うことで前処理工程を減らし、従来よりも環境負荷のより低い油化リサイクルの実現を目指しています。

湘南貿易の油化リサイクル技術開発についての取り組みは、今後も逐次ご紹介していく予定ですのでお楽しみに!




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