海洋プラスチックがデザイナーズ家具に!

“EREMA RECYCLING NEWS 2021”より

私たち湘南貿易が製品販売・サービスを手がけるプラスチック再生機の専門メーカー“エレマ社”(本社オーストリア)が発表した“EREMA RECYCLING NEWS 2021”の中から、海洋プラスチックをリサイクルしたお洒落なデザイナーズ家具にまつわる、デンマーク企業の取り組みについてご紹介します。

参考: EREMA RECYCLING NEWS 2021

引用:「私たちのゴールは、使用済みの漁網が海や埋め立てに廃棄されないようにすることです」フィネラ・メッツ/PLASTIX事業開発・プロジェクトマネージャー EREMA RECYCLING NEWS 2021 p22-23

海洋ゴミ問題に取り組む“PLASTIX”

推定では毎年300万から1500万トンのゴミが海に捨てられ、このうち11%、最大160万トンは海事関連の会社や産業からのものと考えられています。これらのうち、今まで海や埋め立て地に廃棄されていた使用済みの漁網やロープとなどの海洋プラスチックを漁師や業者から回収しリサイクルプラスチック原料をつくりだしているのが、デンマークのクリーンテックリサイクル企業PLASTIXです。

2012年、“海洋ごみを大幅に削減する”という強い決意をもってハンス・アクセル・クリステンセンとオーレ・ラフトの二人が設立したPLASTIXは、当時まだほとんど行われていなかった漁網やロープのリサイクルに取り組みます。今では考えられませんが、最初はPLASTIXがやりたいことが理解されていなかったため、古いモーターや自転車なども持ち込まれることもあった、という全くゼロからのスタートでした。

また、以前の『ECORACY(エコラシー)』の記事でも取り上げているように、マテリアルリサイクルではプラスチックの種類別分別が非常に重要 ですが、漁網やロープのリサイクルの難しさは実はここにあります。例えば、漁網は主に高密度ポリエチレン(PE-HD)で、ロープはポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の混合物でつくられており、残念ながらまだ自動分別化が実現されていないため多くが手作業で行われています。また漁網は比較的均一な材料でつくられているのですがロープには様々な素材が使われていて、違う種類や互換性のない2つ以上のポリマーのロープが一緒に撚られていることも珍しくありません。PLASTIXはロープのメーカーにリサイクルの重要性や、多くのメーカーが同じ原材料・製造方法でロープをつくればリサイクルにおける多くのことが容易になることを説き、自社ラボでは多くのロープについて調べ上げて独自の識別コードを開発して登録することによって社内での仕分けを容易にするなど、様々な企業努力で多くの問題を解決してきました。

そして粉砕、分別、洗浄等の過程を経て、PLASTIX社に導入されている年間最大11,000トンの廃棄物を再処理するエレマ社製のプラントINTAREMA®1512TEシステムによって、最終的にはペレットと呼ばれる小さな粒状の再生処理材料となり、海洋ごみの削減に貢献したいと考えているScanComなど多くの企業に販売され、それを元に新たなプラスチック製品に生まれ変わるのです。

引用:Plastix A/S 公式HP MANUFACTURING GREEN PLASTICS https://PLASTIXglobal.com/howwedoit/

“ScanCom”のエコなデザイナーズ家具

引用:ScanCom International A/S 公式HP DURAOCEAN® From Ocean plastics into sustainable furniture

デンマークのアウトドア家具大手サプライヤーであるScanCom International A/Sが開発したDURAOCEAN®チェアは2020年に発売され、嵐のように市場を席捲しました。シートシェル部は、PLASTIXが主に海洋プラスチックのロープからつくったOceanIXrPPCというポリプロピレン(PP)でできており、椅子の脚にはFSC認証を受けたブラジルのユーカリ材が使われています。発表直後に開催されたイギリスの主要なアウトドア見本市Solexで最優秀新商品賞を受賞したこのDURAOCEAN®チェアは、リサイクル原料からつくられているだけでなく、ライフサイクルの最後にはチェア全体を分解してもう一度リサイクルできるという、まさにサスティナブルな商品でもあります。

DURAOCEAN®チェアを販売しているScanCom InternationalのブランドであるLifestyleGarden®のウェブサイトによると、この椅子の製造のために今までに204トン以上の海洋プラスチックのリサイクルに貢献をしているそうです。また、PLASTICX社のOceanIXrPPCは、現在グリーン、ミント、ブラックの3色のため、DURAOCEAN®チェアも3色展開のようです。

参考:https://corporate.lifestylegarden.com/duraocean/

引用:ScanCom International A/S 公式HP DuraOcean—Page 6

DURAOCEAN®チェアは、革新的・持続可能かつ倫理的に「正しい方法で行動する」というScanCom社のコミットメントに適合した新たな製品群あり、入手可能な材料や顧客の関心に応じて2025年までに、リサイクル材料でつくる射出成形チェアがさらに市場に投入される予定です。

活発化するサーキュラー・エコノミー

食べ物の容器やスプーン、フォークなどの使い捨てプラスチック製品に対する規制に比べればまだまだですが、PLASTIXの設立された2012年当時に比べれば、使用済み漁網やロープなどの海洋プラスチック問題に対してのEUのガイドラインなども整備されつつあります。このような流れの中でPLASTIXの今までの活動は高く評価され、さらなるビジネスの成長も見込めることでしょう。すでにより多くの企業がPLASTIXからリサイクルプラスチック原料を購入し、資源を循環させる新しい経済システムであるサーキュラー・エコノミーに貢献しています。




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