風力発電の環境アセスメントで考えるべき10つのこと

風力発電の環境アセスメントで考えるべき10つのこと

1、環境アセスメントとは?

環境アセスメントとは、「何がデッカイことをするならば、事前に環境を評価しましょう」というものです。

大規模な開発事業を行う際に、いきなり開発したら、どうですか?
開発した後にいろいろ問題が起こりそうですよね。
では、見切り発車によるリスクを防ぐにはどうすればいいか?

それは、環境への影響を事前にきちんと調査し、予測、評価を行う手続きを設けることです。まさに、事前調査、予測、評価、手続きを行うことが環境アセスメントです。

2、環境アセスメントとは環境影響評価法で手続きなどが定められています

さらに、風力発電に関しては、平成24年10月に、風力発電事業を環境影響評価法の対象事業に追加されました。

法の対象事業規模(第一種事業)は総出力1万 kW 以上の風力発電所です。
一般的な風力発電設備の単機出力 2,000~3,000kW 級の風力発電設備であれば、風力発電設備が4~5基以上設置すると、環境アセスメントの対象になり、改変面積は5ha 前後、風力発電設備間の距離の合計は1km 程度となります。

3、影響を受ける可能性がある環境要素をひたすらアウトプットしよう

環境アセスメントで考えるべきは、「立てたとき、動いたとき、絡まれるとき」を想定しなければなりません。

立てたときは、設置時の環境要素ですね。
動いたときは、風力発電が稼働時の環境要素です。
絡まれるときは、設置環境から流動的になったときに受けざるを得ない環境要素です。

環境アセスメントは環境要素、環境に対する因果関係を取りこぼさないことが大切です。あらゆる環境に対して適切な考慮を行うためには、幅広い専門知識が必要になります。

4、設置時は、設置が終わる前だけでなく、工事のことも考える

環境アセスメントは風力発電設置時のことだけでなく、設置が終わるまでの工事のことも考えなければなりません。

工事中の影響要因の区分には、

・工事用資材等の搬出入
・建設機械の稼働
・造成等施工などによる一時的な影響

があります。工事を行うための資材を搬入する時に、「大気質(窒素酸化物、粉じん等)」や「騒音及び超低周波音」、「振動」、「人と自然との触れ合い活動の場」などが想定されます。

例えば、トラックが機材を運んでいるときに、トラックの荷台の端から砂がぼろぼろ零れて、ほこりが舞ってしまうなんて経験はありませんか?そのほこりに含まれる物質が危険、しかも、搬入回数が非常に多く、設置場所近隣に住む人に害を及ぼすようでは、工事をしちゃいけませんよね。

環境アセスメントは、造成等の施工による一時的な影響についても、きちんとに事前調査、予測、評価伴する必要があります。発電設備の設置に加え、工事用仮設道路、取付道路や土捨場等の付帯施設の設置による土地の改変、水質(水の濁り)、動物、植物、生態系、廃棄物など、考えることは盛り沢山です。

5、設備の輸送ルートを考えよう

立地条件によっては、港湾から発電所までの風力発電設備(ブレード、タワー等)の輸送ルートがかなり長くなるケースがあります。

そうなると、まずは、輸送ルートの通り道である一部の道路を変えないければ、運べないなんてことが起こってしまいます。その策として、一部道路の幅を引くするために土地の改変が行われる可能性があります。

6、稼働時に考えたい「シャドーフリッカー)」

シャドーフリッカー、なんだか特撮ヒーローの必殺技のような響きですが、これは、晴れた日に、風力発電稼働させ風車の羽(ブレード)の影が回転した際に、地上が明暗を繰り返す現象です。

もし、日差しが入る室内で、カーテンを開けたり、閉じたりをずっとされたらどうですか?チカチカしますよね。

7、NEDO マニュアルを参考にし、さらに精査を行うようにしましょう

NEDOとは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構のことで、日本最大級の公的研究開発マネジメント機関として、経済産業行政の一翼を担い、エネルギー・環境問題の解決および産業技術力の強化に取り組む国立研究開発法人です。

これまでの風力発電事業の多くは、NEDO マニュアルに基づいて自主的な環境アセスメントが実施されてきました。

しかしながら、NEDOのマニュアルにも弱点があります。それは、

・対象事業の目的、内容、詳細な事業計画が十分に詳細でない
・事業領域に取付道路や土捨場等の付帯施設を含めていないケースがある
・風車の影、生態系、廃棄物等が環境影響評価の項目にない
・自治体、住民等への意見聴取・情報提供に対する処置があまい

ということです。割と抜け目がありますよね。
だからこそ、NEDOのマニュアルを拡張しながら、精査を行うことが大切になります。

8、個別事業助言委員からの意見を大切

個別事業助言委員とはいわゆる有識者です。環境省では、平成 24 年度より、環境アセスメントに専門的知見のある学識経験者として、環境影響審査助言委員会個別事業助言委員から助言を求め、環境大臣の意見の形成過程において当該助言を勘案することで、透明性及び技術的水準の確保を図ろうとしています。

多岐に渡る因果関係を見極めるのが環境アセスメントですから、実際に多くの有識者からの意見を聞くことが非常に大切です。

9、個別事業助言委員からの意見を大切

幅広く複雑な調査をきちんと行うには、過去のノウハウをきちんと吸収することが大切ですよね。

そのためには、既存の環境アセスメント結果の共有と既設の風力発電所における事後調査を、風力発電事業者が即座に発信、アップデートできる仕組みを磨き続けるのが国の重要な役割の一つになっていくでしょう。

10、鳥類に対する影響の知見は少ない

風力発電における環境アセスメントで、鳥類に関する情報は不足しているようです。地域によって生息する鳥類も様々でしょうし、生態系によって行動パターンが異なり、風車に絡まってしまう現象の予測を立てるのが難しいこともあるようです。

最後に

以上、風力発電の環境アセスメントで考えるべき10つのことについてご説明してきました。実際に大規模な風力発電を設置する方は多くはいないかもしれませんが、知識として身に着けておくと、環境問題に対して、多くの視点で本質を捉えることができるようになります。

ぜひ、参考にしてみて下さい。




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