エコは楽しみながら、削減だけでなく循環へ

エコは楽しみながら、削減だけでなく循環へ

時代と共に推移するファッション業界のエコ事情

ファッション業界は、製造、輸送、消費、廃棄という各過程で環境に負荷がかかり、特に近年では大量生産・大量消費の傾向であることが問題視されています。

その中でも、早くからエコに取り組んでいるブランドの素敵なストーリーをご紹介します。

イギリスらしいユーモアあふれるスローガン

クラフツマンシップと機能性、そしてスタイリッシュで時には可愛くユニークなデザインで人気のイギリスブランド「アニヤ・ハインドマーチ」が2007年に発表したエコバッグは、世界中に旋風を巻き起こしました。

引用:アニヤ・ハインドマーチ公式HP I Am Not A Plastic Bag | Anya Hindmarch JP

コットン地に大きく「I’m NOT A Plastic Bag」と書かれたトートバッグは、日本でいうレジ袋を減らそう!というキャンペーンのためにつくられたものです。(英語圏では“ビニール袋”のことは“プラスチックバッグ”と言うことがほとんどです。また“NOT”を大文字にして強調していますね。)そのユニークなスローガンだけでなく、このバッグを持った多くのセレブリティの写真が広まったこと、数量限定で通常のアニヤ・ハインドマーチの商品よりかなり手頃な価格であったこと、また各地で異なるカラーが発売されたことなどもあり、発売当日にはショップに行列ができて完売。コピー商品だけでなく、「I’m NOT A xxxxxxx」などの多くのパロディバッグも登場したほどでした。

今ほどまだ世界中でエコ意識が浸透してなかった当時、本来の目的から若干違う形で社会現象になったとはいえ、結果的には多くの人々の意識を変え、イギリス国内で年間100億枚以上使われていたレジ袋が2010年には61億枚まで減り、2015年のレジ袋有料化につながったと言われています。これはファッション業界における、エコに取り組む企業の先駆けと言えるでしょう。

参考:アニヤ・ハインドマーチ公式HP 「I’m NOT A Plastic Bag」について I Am Not A Plastic Bag | Anya Hindmarch JP

そのアニヤ・ハインドマーチが2020年に販売を開始したのが、「I AM A Plastic Bag」(こちらは“AM”を大文字にすることによって、プラスチックであることを強調しています)。そう、これは2007年の「I’m NOT A Plastic Bag」をオマージュした、リサイクルプラスチックを原料としてつくられたバッグなのです!

一見コットンキャンバスに見えるこのバッグの素材は、ペットボトルからリサイクルされた繊維を抽出して織ったもので、さらに自動車などのフロントガラスをリサイクルしたポリビニルブチラール(PVB)でコーティングすることによって、長く使えるよう工夫されています。

参考:アニヤ・ハインドマーチ公式HP 「I AM A Plastic Bag」について I Am A Plastic Bag | Anya

参考:アニヤ・ハインドマーチ公式HP 「I AM A Plastic Bag」についての質問 I Am A Plastic Bag FAQ’s | Anya Hindmarch JP

そして2022年3月、またもやアニヤ・ハインドマーチから素敵なニュースが飛び込んできました!

イギリス版のアニヤ・ハインドマーチ公式ウェブサイトによると、“エコをエゴよりも優先する”イギリスのスーパーマーケット、セインズベリー(Sainsbury’s)ウェイトローズ(Waitrose)とコラボしたエコバッグ「ユニバーサルバッグ」(The Universal Bag)が発売されるとのこと。

引用:アニヤ・ハインドマーチ公式HP (イギリス版) The Universal Bag | Anya Hindmarch UK

100%リサイクル素材でつくられたこのエコバッグは、バッグ内のポケットに折りたたんでポーチ状で持ち歩くことができます。アニヤ・ハインドマーチは、「I’m NOT A Plastic Bag」と「I AM A Plastic Bag」の両プロジェクトでレジ袋の使用を劇的に減少させることに貢献したとはいえ、まだまだ十分ではないと考えているようです。エコバッグブームで買ったりもらったりしたはいいがどこかに追いやられてしまったもの、数回しか使わなかったもの、また結局そのエコバッグを最後にはただ捨ててしまうことになる、ということから、長く愛用でき、最終的にはエコバッグ自体をリサイクルできるものにすることによって、埋め立て地に廃棄されるプラスチックを削減すること。今回のプロジェクトの目的は、このユニバーサルバッグが人々の“再利用”に対する考え方を刺激することにあるそうです。

このプロジェクトが何より素晴らしいのは、アニヤ・ハインドマーチの人気モチーフ「Eyes」を使いブランドロゴもあしらわれていながら価格は10ポンド(日本円で約1600円)で、ブランド商品としてアニヤ・ハインドマーチの店舗で販売するのではなく、エコアイテムとしてセインズベリーとウェイトローズの店舗のみで販売されることです。(なので日本では購入できないことがとても残念です。)しかも10年間の保証つきなので、年たった1ポンドの投資で手に入れることができます。スーパーマーケットというレジ袋が消費されるその場所で、ブランドパワーを使って人々にエコについて再認識を促し、手の届く価格でその商品を販売する ― 環境に対するアニヤ・ハインドマーチの本気度が伝わってくる気がします。

写真のグリーンのバッグはウェイトローズで3月23日に発売されるバージョンで、すでに販売されているセインズベリーのバッグはボルドー色のようです。

参考:アニヤ・ハインドマーチ公式HP (イギリス版) The Universal Bag | Anya Hindmarch UK

文明化された現代社会において全てのプラスチック製品を排除した生活を送ることは無理だとしても、少しでもプラスチックゴミを減らそう!と取り組んだのが2007年の「I’m NOT A Plastic Bag」であったとすれば、10年以上の時を経て、今の時代にマッチしたアップサイクルサステナビリティに真剣に取り組んだ製品が「I AM A Plastic Bag」、そして継続的に人々のエコ意識に問いかけるのが「ユニバーサルバッグ」と言えるでしょう。

このようなブランドの取り組みに対して、私たちは自分たちの意志で積極的に商品や行動を選択する時代になってきました。楽しみながら自分のライフスタイルにあったエコを取り入れることができる自由を手にする、そんな時代が訪れています。

ファストファッションの最先端

衣料品は、リウェア、 リユース、 リサイクル、 エネルギー、そして完全循環型什器へ

北欧諸国はサステナビリティへの意識・理解が高く、中でもスウェーデンブランドの取り組みには目を引くものがあります。そのひとつがH&M。

シーズン毎の流行を手頃な価格で楽しむことができると人気のファストファッションは、大量生産・消費・廃棄を問題視されることもありますが、H&Mはファストファッションサステナビリティの両立を目指し、実践しているブランドなのです。

H&Mは今までにも衣料品を回収・分別し、まだ着られるものは世界中で販売したり、他の製品やエネルギーにリサイクルしてきましたが、ついに洋服から商品陳列棚やハンガーまでつくってしまいました!

3月1日に東京・池袋にオープンした新店舗は、H&Mの不良品を細かく裁断し結合剤を加えて成型した循環型繊維リサイクルボード「PANECO®(パネコ)」を使った什器を導入した日本初の店舗として、循環型を体現することができます。池袋店の什器に使われているPANECO®には、H&Mジャパンで発生した不良品のみを使用。繊維含有率が90%以上でありながら十分な強度を持ち、使用後にはリサイクルして再びPANECO®として蘇えらせることができる、完全循環型のボードなのです。

引用:H&M公式HP 「H&Mで発生した不良品をリサイクルしたPANECO®を什器に使用」 3月1日(火)オープン!前田敦子さんを池袋店限定広告に起用|H&Mのプレスリリース

引用:H&M公式HP 「H&M池袋店に導入するPANECO®の製作工程図」 サステナブルな什器を導入したH&M 池袋店、3月1日(火)にオープン!|H&Mのプレスリリース

環境への負荷を減らすことができるオーガニックコットンの導入、ブランドや状態を問わない古着の回収とリサイクル、サステナブルな素材を使った商品であることが一目でわかるグリーンタグやマイバッグ持参の推奨などの企業の取り組みに参加することによって割引クーポンやポイントがもらえるという、消費者である私たちの目をエコに向けさせながらもショッピングの楽しみを還元しているH&Mは、まさに循環型でサステナブルなファッションをグローバルで追求したブランドと言えることでしょう。

参考:PR TIMES サステナブルな什器を導入したH&M 池袋店、3月1日(火)にオープン!|H&Mのプレスリリース

参考:H&M公式HP 「私たちのとりくみ」 サステナビリティ | H&M

参考:WWD なぜスウェーデンにはサステイナブル先進企業が多いのか 貧困国から世界一「評判のいい国」になった理由 – WWDJAPAN

エコも時代によって進化しています。私たちもファッションを楽しみながら、しなやかに今の時代のエコを積極的に実践していきたいですね!




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