地球を救う?植物由来のバイオプラスチックの魅力について

地球を救う?植物由来のバイオプラスチックの魅力について

バイオプラスチックとは、生物資源(バイオマス)から作られたプラスチックのことです。本来プラスチックは石油から作られていました。

しかし、石油の資源の枯渇だけでなく、今、化学的なプラスチックが大変な問題になっています。

その1つとして挙げられるのが、マイクロプラスチック問題です。マイクロプラスチックは、大きさ5㎜以下のプラスチックを指しますが、現在、海には大量のマイクロプラスチックが溢れ、なんと魚が自然にプラスチックを食べてしまっているのです。

そして、漁獲された魚を私たちは食べています。つまり、私たちは、魚の体内に取り込まれたプラスチックをそのまま有害物質と共に食べてしまっているのです。

だからこそ、生物由来の安全なプラスチックの製造が求められているのです。バイオプラスチックは、既存のプラスチックよりも高価な点が課題にありましたが、その問題も徐々に解消されつつあります。

また、石油由来のプラスチックは燃えやすく、染色しにくいという問題がありますが、植物由来プラスチックは燃えにくく、藍染めなどの染料とも相性が良く、優れた素材の潜在力をたくさん秘めています。

そこで、今回は、植物由来のバイオプラスチックの取り組みをお伝えしたいと思います。

日本でのバイオプラスチックの取り組み

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは2015年から、お土産を入れる買い物袋にサトウキビ由来の材料を取り入れたバイオプラスチックを利用しています。

イオンは2013年から、総合スーパーの食品売り場の有料レジ袋にバイオプラスチックを使用。店舗で発売している傘のビニール生地にもバイオプラスチックを利用しています。

資生堂は2011年に、「スーパーマイルド」シリーズのシャンプーとコンディショナーの容器に、サトウキビ由来のバイオプラスチックを利用しています。

イケア・ジャパン株式会社では、日本が世界一の売上げをたたき出している、「ISTAD/イースタード プラスチック袋」の主素材を再生可能なバイオプラスチックへ切り替えています。

ISTAD/イースタードに使用するプラスチックをバイオプラスチックに変えることにより、年間約75,000バレルの石油が節約され、従来のプラスチックにくらべてCO2排出量の大幅な削減が可能になります。

今やバイオプラスチックは、様々なところで導入されています。

バイオ100%のプラスチック

大阪大学宇山浩教授の研究成果を事業化したバイオワークス社は、とうもろこしのデンプンから作られるポリ乳酸を使った100%のバイオプラスチックの製造を実現しています。

そもそも、とうもろこし由来のポリ乳酸は、強度が低く、最終的には石油由来の成分を混ぜている現状がありましたが、独自の添加剤を開発することで、ポリ乳酸と添加剤のみのバイオプラスチックを作ることを可能にしました。

バイオプラスチックは、生物資源(バイオマス)の純度にも注目する必要があります。

光合成のように自然生成するバイオプラスチック

作り方も天然由来にできるバイオプラスチックとして、ラン藻が注目されています。ラン藻は、炭水性の藻類で、単細胞の原核微生物で、光合成によって増殖することができます、

理化学研究所(理研、野依良治理事長)とマレーシア科学大学(オマール・オスマン副学長)は、ラン藻に微生物の遺伝子を導入し、光合成だけで高効率にバイオプラスチックを生産することに成功しました。光合成だけでバイオプラスチックを生産、生産効率14%を達成。育成が可能にバイオプラスチックの低価格化と環境負荷の低減に貢献

また、明治大学農学部を中心にした研究では、光合成によって直接二酸化炭素を取り込むことができるラン藻を利用し、水素を合成する酵素の活性を遺伝子改変によって低下させ、コハク酸の生産量が5倍、乳酸の生産量が13倍に増加することが分かりました。コハク酸や乳酸はバイオプラスチックの原料となります。

バイオプラスチックでインフラを軽量化

フィンランドの首都ヘルシンキにあるメトロポリア大学を中心に、2010年より開発されたコンセプトカー「Biofore」は、ガラスを除くほぼ全ての外板に、「UPM Formi」と呼ぶ木質セルロースを用いたバイオプラスチックを採用しています。同サイズの一般的な車両に対し約150kg軽量化を実現しています。

車の素材には、バイオプラスチックと同様に「セルロースナノファイバー」(CNF)という素材が使われています。

セルロースナノファイバーは、環境をテーマにした展示会「エコプロ2017」では、環境省や製紙メーカーを中心に多くの製品の素材に利用が試みられたことでも注目度が高まっています。

セルロースナノファイバーは、木材・枝葉・果実やジュースの絞りかす・コーヒーがらなどの食品残渣、稲わら・落ち葉・雑草などの未利用バイオマス、古紙などの植物バイオマスをパルプ化したものを、さらにナノ(10億分の1メートル)化した繊維状物質です。

植物由来素材のため再生利用が可能で環境負荷が小さく、鉄に対し約1/5の重量と約5倍の強度、250m2/g以上の大きな比表面積を持ち、かつ熱変形はガラスの1/50程度、などの優れた物性を備えています。

耐熱性と強度を増したバイオプラスチック

低炭素社会の構築に必須のバイオプラスチックには耐熱性や力学物性に問題点がありました。

しかし、北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科では、バイオプラスチックの材料に、堅い構造の天然物で香辛料の成分でもあるシナモン系分子を利用し、耐熱性と強度を増したバイオプラスチック素材を開発。

シナモン系分子を多く生産する微生物を遺伝子組み換えにより構築することで、生産性を出すことができるとしています。

より質の高いバイオプラスチックは、運送機器の軽量化、産業廃棄物削減など、さまざまな応用展開が期待できます。

トウモロコシと大豆由来の石鹸

オーガニックコスメの販売事業を行っているコスメハウス合同会社は、アメリカで人気急騰中のソープディッシュ 「AIRA」 を、2018年1月25日より、公式販売サイトで発売をしました。

AIRAは、トウモロコシと大豆由来のリサイクル可能なバイオプラスチックを使用。化学物質由来の石鹸は、化学物質が肌を汚染することを防いでくれます。

漆器の質感を再現したバイオプラスチック「漆ブラック」

電機メーカーのNECは2018年2月6日、漆器の質感を再現したバイオプラスチック「漆ブラック」の表面に、蒔絵を再現する「蒔絵調印刷」を開発したと発表しました。

NECの開発したバイオプラスチックは、

・伝統的な日本の漆器が持つ質感の再現
・光沢度が高く明度が低い
・深く高級感のある黒の色を出せる
・従来のプラスチックにない装飾性
・表面の傷付きにくさ
・耐傷性(耐摩耗性)の向上

などのメリットがあります。高級志向の家電や日用品、自動車や携帯電話の外装、PCのフレーム、ガソリンスタンドの給油機、建材などに使われることが期待されています。

最後に

バイオプラスチックの現状を見てみると、「自然のまま」ということの大切さ、リスクのなさを改めて感じました。

自然が自然らしくあるための開発という点で言えば、バイオプラスチックに期待する部分は大きいですね。ぜひ、今回の記事も、参考にしてみて下さい。

<参考資料>
・「NEC、漆調プラスチック表面に蒔絵を再現する技術を新開発|Engadget 日本版」
・「バイオプラスチック(トウモロコシ、大豆由来)の石鹸置きを発売/コスメハウス プレスリリース【健康美容EXPO】」
・「セルロースナノファイバーを全面採用したクルマが公道を走る日は近い!?【エコプロ2017】」
・「買い物袋や容器、ごみ袋… バイオプラスチック身近に|産経ニュース」
・「~より多くの方々にサステナブルな生活を~イケアがベストセラー商品「ISTAD/イースタード」を再生可能なバイオプラスチック素材に切り替え」
・「バイオエコノミー:資源転換、化石から生物へ 欧州で広がる温暖化対策|毎日新聞」
・「バイオワークス、植物由来原料100%のプラスチックを実現|TECH WAVE」
・「海に漂う“見えないゴミ” ~マイクロプラスチックの脅威~ – NHK クローズアップ現代+」
・「共同発表:水素を合成する遺伝子の改変でバイオプラスチック原料の増産に成功|国立研究開発法人 科学技術振興機構」
・「390度超、世界最高耐熱のバイオプラスチックを開発~金属代替による軽量化に期待~|国立研究開発法人化学技術振興機構」
・「光合成によるバイオプラスチックの生産効率で世界最高レベル達成|理化学研究所」




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