後編:IPCC第6次報告書で求められる温暖化対策

前回の記事では、IPCC第6次報告書で地球温暖化及びその影響の拡大が進んでいるということ、その原因は人間活動であることに疑いの余地はないと明記されたことを取り上げました。このまま温暖化が進むと2030~2052年の間に平均気温の上昇が1.5℃に達する可能性が高いため、早急な対策が求められています。

図1:気温上昇の予測に関する5つのシナリオ
   引用:https://www.env.go.jp/press/109850/116628.pdf

気温上昇は今後も継続されますが、これまでの温室効果ガス(GHG)排出量は地球の平均気温上昇を1.5℃にまで引き上げるものである可能性は低いそうです。既にGHGの排出を削減・抑制する策の効果が表れ始めていますが、まさに今が地球温暖化の悪影響を最小限に食い止めるための判断ができる最後のチャンスだということです。

IPCC第6次報告書 / 1.5℃特別報告書

 IPCC第6次報告書の「1.5℃特別報告書」では、主にエネルギーシステムと土地利用に変革を起こす必要があると述べられています。

エネルギー由来のCO2排出

まず、生活行動・運輸・産業などの面においてエネルギー利用の効率性を高めること。企業による環境マネジメントなどに効果があるように見られますが、個人でも家庭の電力を再エネの会社に切り替えるなどの変革を起こすことができます。自動車を使わないようにするのもGHG排出削減につながります。そして供給においては、バイオマスや太陽光などの再生可能エネルギーや原子力にシフトし、化石燃料の使用をできるだけゼロに近づけることが重要だと述べられています。

土壌由来のCO2排出

土地利用においては、なるべく少ない資源量で生産できる食料の消費を増やすこと、土壌炭素貯留(土壌に炭素を溜めることで大気中の二酸化炭素を減少させる方法)、森林の保護・植林といった方法を推進することが有効だそうです。特に食料は、個人でお肉や卵・牛乳の消費を減らして菜食中心を心掛けることによって温暖化対策に貢献できます。植物性食材は家畜のための土地を必要としないので、少ない資源で生産できる食料と言えます。

温暖化対策を行う上で気を付けるべきこと

 加えて1.5℃特別報告書では、組織・地域や国家単位で温暖化対策に取り組む際は、人権侵害・生活水準の低下・格差の拡大といった“トレードオフ”を伴わないように注意を払うことが求められています。世界全体で取り組む問題だからこそ、開発途上国や脆弱な地域への経済的支援策を整備することも重要なのです。エネルギー及び土地の利用方法を変革することはSDGsの達成にも正の影響をもたらすことが報告されています。

 「地球規模の問題なのに、自分一人が心掛けたところで意味があるのかな…」と感じた方もいらっしゃるかと思います。しかし、心掛ける人が増えればその効果は大きくなります◎

報告書の内容はかなりシリアスですが、気軽に「やってみたい・続けたい」と思えることが個人の行動変化の第一歩です。日ごろの気分転換もかねて、自転車でのお出かけやベジタリアンメニューに挑戦してみましょう!

「1.5℃特別報告書」(1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化、持続可能な開発及び貧困撲滅への努力の文脈における、工業化以前の水準から1.5℃の地球温暖化による影響及び関連する地球全体での温室効果ガス(GHG)排出経路に関するIPCC特別報告書 政策決定者向け(SPM)要約(2019年8月1日版 環境省仮訳))http://www.env.go.jp/earth/ipcc/special_reports/sr1-5c_spm.pdf




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